東南アジア共通現地での認知づくり
東南アジア進出の広報は最初の 3 か月で何をする?発表の時期と素材
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東南アジアへの進出が正式に決まって、いまは現地法人の設立手続きに追われています。広報は営業を始めてから考えればいいと思っていたんですが、それで間に合いますか?
間に合わないわけではありませんが、営業を始めた日に、現地の誰も社名を知らない状態から始まります。訪問先の担当者が社名を検索しても、その国の言葉で読める情報が 1 件も出てこない、という状況です。
日本語の自社サイトと、本社のリリースならあります。
それは日本の読者に向けたものなので、現地の担当者には読めないことが多いです。今日は、進出が決まってから最初の 3 か月で広報として何をしておくかを、順番に見ていきます。大がかりなことはしません。進出の発表を 1 本、現地の人が読める形で出すところまでです。
東南アジア進出で広報が後回しになる理由
そもそも、なぜ広報は後回しになるんでしょう。うちだけではない気がします。
多くの会社で同じことが起きています。理由は 3 つあって、どれも担当者の落ち度ではありません。1 つ目は、設立の時期には登記、口座、オフィス、採用と期限のある仕事が重なり、期限のない広報が後ろに回ることです。
まさに今の私です。残りの 2 つは何ですか?
2 つ目は担当が決まっていないことです。本社の広報部は日本向けの発表を担当していて、現地向けは海外事業の担当者が兼ねる、という分かれ方になりがちです。3 つ目は言語です。日本では日本語で 1 本出せば取引先にも求職者にも読めますが、東南アジアでは国ごとに読まれる言語が違います。
日本と同じ感覚で「本社のリリースがあるから大丈夫」と考えていました。
そこで止まる日本企業は多いです。ただ、やることを 3 か月に分けて並べると、1 つずつは小さな作業です。まず、発表を誰が読むのかから確認しましょう。
進出の発表を出す意味と、読む 3 つの相手
進出の発表を出すと、具体的に誰の役に立つんですか?
相手は 3 つに分けられます。取引先や代理店の候補、採用の候補者、それから行政や地域の関係者です。3 者に共通するのは、会う前か会った直後に社名を検索することです。
| 相手 | 知りたいこと | 発表に書くこと |
|---|---|---|
| 取引先・代理店候補 | どんな会社か、現地で何を扱うのか | 事業内容と扱う商品、拠点の所在地、問い合わせ先 |
| 採用の候補者 | 実在する会社か、どこで何の仕事をするか | 拠点の所在地と開設時期、現地で行う業務、代表者の名前とコメント |
| 行政・地域の関係者 | 何をしに来た会社か、地域とどう関わるのか | 進出の目的、現地での事業の内容、正式な社名の表記 |
採用にも関係するんですね。求人を出せば応募は来るものだと思っていました。
採用が難しくなったと感じている会社は少なくありません。日本貿易振興機構 (JETRO) の 2025 年度の調査では、ASEAN に進出している日系企業の 36.8% が、直近 2 年間で採用が難しくなったと答えています。知られていない会社の求人は、候補者にとって判断する材料が少ないので、会社の説明を現地語で読める場所を作っておく意味があります。
行政というのは、どういう場面を想定していますか?
工業団地の運営会社や自治体の担当者と話す場面です。現地語で書かれた記事があると、会社の説明を短く済ませられる場合があります。ただし、発表を出したから手続きが早く進む、といった効果を期待するものではありません。
なるほど。会社の説明を先に置いておく、という位置づけですね。
その理解で合っています。次は、その発表をいつ出すかです。
発表のタイミングは設立登記・拠点開設・最初の契約の 3 回
進出の発表は、いつ出すのが正しいんでしょうか。決定した時点ですか、それとも営業を始める時点ですか?
正解は 1 つではなく、発表できる節目が 3 回あります。設立登記が終わったとき、拠点を開設したとき、最初の契約がまとまったときです。3 回とも出す必要はなく、営業を始める日に近い節目を 1 つ選びます。
| 節目 | 発表できる内容 | 向いている場合 | 気をつける点 |
|---|---|---|---|
| 設立登記の完了 | 社名、所在地、代表者、事業内容 | 営業開始まで時間があり、先に採用を始めたい | 開業日や扱う商品がまだ決まっていないと、内容が薄くなる |
| 拠点の開設 (事務所・工場・店舗) | 所在地、開設日、業務の内容、写真 | 写真を用意でき、開設日が決まっている | 開設日が動くと配信日も動く |
| 最初の契約・提携 | 相手先の社名、取引の内容 | 現地の相手と組んだことを伝えたい | 相手先の了承と、発表文の確認に日数がかかる |
最初の契約が一番ニュースになりそうですが、相手の了承が要るんですね。
はい。相手先の社名を出す場合は、発表文を相手にも確認してもらうことになります。日数が読めないので、最初の 1 本にするなら、自社だけで内容を決められる設立登記か拠点開設のほうが予定を立てやすいです。
節目を選ぶときの考え方
- 営業や採用を始める日から逆算し、その前に出せる節目を選ぶ
- 自社だけで内容を決められる節目 (設立登記・拠点開設) は日程を組みやすい
- 相手先がいる発表 (契約・提携) は、了承と確認の日数を先に見込む
- 選ばなかった節目は、2 本目、3 本目の発表として残しておく
日本の本社リリースと同じ日に出したほうがいいですか?
上場企業で開示の決まりがある場合は、本社の広報部や IR 担当の指示に従ってください。そうでなければ、同じ日にそろえる必要はありません。現地で節目を迎えた日に合わせるほうが、現地の読者にとっては自然です。祝祭日や大型連休は国ごとに違うので、配信日を決める前にその国の暦を確認しておくと安心です。
節目は決められそうです。次に気になるのは、現地語の原稿をどう用意するかです。
本社リリースの現地語版をどう作るか
本社が出す日本語のリリースがあります。それを翻訳すれば現地語版になりますよね?
翻訳の前に 2 つ決めることがあります。何語にするかと、日本語の原稿をどこまで直すかです。まず言語から見てください。JETRO の資料から 6 か国の言語を並べるとこうなります。
| 国 | 言語・公用語 (JETRO「概況・基本統計」の記載) | 進出の発表を出す言語の目安 |
|---|---|---|
| インドネシア | インドネシア語 | インドネシア語 |
| ベトナム | ベトナム語、ほかに少数民族語 (公用語はベトナム語) | ベトナム語 |
| タイ | タイ語 | タイ語 |
| マレーシア | マレー語、英語、中国語、タミル語 (公用語はマレー語) | 英語から始める |
| フィリピン | フィリピノ語、英語、セブアノ語など (公用語はフィリピノ語と英語) | 英語 |
| シンガポール | 公用語は英語、中国語 (北京語)、マレー語、タミル語 | 英語 |
英語版を 1 本作れば全部の国で使える、というわけではないんですね。
インドネシア、ベトナム、タイは、言語の欄に英語が出てきません。この 3 か国に進出するなら、現地語版を作る前提で予定を組んでください。フィリピンとシンガポールは英語が公用語に入っているので、英語版で出せます。
日本語の原稿はどこを直すんですか?
本社のリリースは、日本の読者が会社を知っている前提で書かれています。現地の読者は会社を知りません。そこで、最初の段落に「何の会社が、その国のどこで、何を始めるのか」を書き足します。日本での創業年、主な商品、従業員数のような基本の情報も、本社版では省かれていることが多いので補います。
逆に、削るところはありますか?
連結業績への影響や、日本の業界でしか通じない用語は、現地の読者には要りません。主語を省いた文も、翻訳で意味が変わりやすいので、日本語の段階で主語を補っておきます。
現地語版を出す前に確かめること
- 現地法人の社名の表記が、登記した表記と一字ずつ一致しているか
- 所在地、代表者の名前、開設日が、本社版と食い違っていないか
- 金額や数量の桁、通貨の単位が原文と合っているか
- 機械翻訳を下書きに使った場合、現地語を読める人が配信前に一度目を通したか
- 相手先の社名を出す場合、相手先が発表文を確認したか
現地語を読める人が社内にいない場合はどうすればいいですか?
現地法人の設立を手伝っている会計事務所やコンサルタント、採用した現地スタッフ、翻訳を頼んだ先に確認を依頼する方法があります。誰にも確認してもらわずに出すことだけは避けてください。間違いがあっても、社内の誰も気づけないからです。
原稿の作り方は分かりました。原稿のほかには、何を用意しておけばいいでしょうか。
最低限そろえる素材
設立の準備で手いっぱいなので、用意するものはできるだけ絞りたいです。
最初の 1 本なら、5 つで足ります。新しく作るものは少なく、ほとんどは設立手続きの中ですでに決まっている情報です。
進出の発表で最低限そろえる 5 つの素材
- 現地法人の基本情報 (登記した表記の社名、所在地、代表者、事業内容)
- 会社の紹介文 (日本での創業年、主な商品、従業員数などを 3〜4 文で)
- 代表者のコメント (その国に進出する理由を 2〜3 文で)
- 写真 1〜2 枚 (拠点の外観、商品、代表者のいずれか)
- 問い合わせ先 (現地で受けられるメールアドレスか電話番号)
思ったより少ないですね。問い合わせ先は本社の代表番号でも構いませんか?
出せますが、現地の人が日本語の窓口に連絡するのは難しいです。英語か現地語で返信できるメールアドレスを 1 つ用意しておくと、発表を読んだ人が連絡しやすくなります。
それなら今週中に集められそうです。全体の流れを、3 か月の予定に落とすとどうなりますか?
進出決定から最初の 3 か月でやる広報の手順
設立手続きと並行して進めるとして、どの月に何をすればいいですか?
1 か月目は決める、2 か月目は作る、3 か月目は出して使う、と分けます。期間は目安なので、設立手続きの進み方に合わせて前後させてください。
手順
届けたい相手を決める。取引先、採用の候補者、行政・地域の関係者のうち、最初に会う相手を選ぶ
発表する節目を選ぶ。設立登記、拠点開設、最初の契約のうち、営業を始める日に近いものにする
出す言語を決める。進出先の国の公用語を確認し、英語で出すか現地語で出すかを決める
素材を集め始める。基本情報、会社の紹介文、代表者のコメント、写真、問い合わせ先の 5 つ
日本語の原稿を現地向けに直す。最初の段落に、何の会社がどこで何を始めるのかを書く
現地語版を作る。現地のスタッフ、翻訳会社、配信サービスの翻訳オプションのいずれかを使う
現地語を読める人が、社名の表記と数字を確認する。本社の確認もこの時点で済ませる
節目に合わせて配信する。その国の祝祭日と重ならない日を選ぶ
掲載された記事の URL を一覧にする
一覧を営業資料と採用ページに載せる
最後の 2 つは考えていませんでした。出して終わりではないんですね。
掲載された記事の URL は、出したあとに使う資料になります。会社案内の最後のページや、商談後に送るメールに載せておくと、相手が自分の国の言葉で会社のことを読めます。採用ページに載せれば、候補者が会社を調べるときの材料になります。
営業を始める前に一覧までできていれば、最初の訪問から使えますね。残るのは、作った原稿を現地のメディアにどう届けるかです。
発表を現地メディアに届ける手段
現地の記者に知り合いはいません。どうやって届ければいいですか?
手段は 3 つあります。自社で媒体に直接送る、配信サービスを使う、現地の PR 会社に委託する、です。進出して間もない会社の立場で比べるとこうなります。
| 手段 | 進出直後の会社にとっての特徴 | 向いている場合 |
|---|---|---|
| 自社で直接送る | 費用は抑えられるが、送り先の連絡先を自分で調べる必要がある | 現地に広報の経験者がいる |
| 配信サービスを使う | 送り先を自分で探さなくてよい。翻訳を頼めるサービスもある | 現地に広報担当がおらず、まず 1 本出したい |
| PR 会社に委託する | 取材対応や継続的な発信まで任せられる。契約までに打ち合わせの期間が要る | 発表後も継続して発信する予定がある |
うちは現地に広報がいないので、配信サービスが現実的に見えます。出したら載るものなんですか?
一般には、配信しても載るかどうかは媒体の判断です。掲載を条件に入れているサービスもあって、たとえば海外PR.jp は、対応している国ごとに 10 媒体以上への掲載を保証しています。掲載先は総合ニュースサイトやビジネス・経済系のメディアが中心で、どの媒体に載るかまでは選べません。
費用と、現地語への対応はどうなっていますか?
配信が 1 か国 1 配信で 50,000 円 (税別)、翻訳オプションが 1 言語 20,000 円 (税別) で、英語、タイ語、ベトナム語、インドネシア語に対応しています。1 か国に 1 言語で出すなら、合わせて 70,000 円 (税別) です。掲載された媒体名と URL の一覧は、配信から 5 営業日を目安に管理画面で確認でき、先ほどの手順 9 の一覧にそのまま使えます。時期によってキャンペーン価格の場合があるので、最新の料金は公式サイトで確認してください。
国ごとに見積もりを取らなくていいなら、稟議は書きやすいですね。
どの手段を選ぶ場合も、先に決めるのは相手、節目、言語の 3 つです。手段はそのあとで選べば足ります。最後に、今日の内容を表にしておきます。
最初の 3 か月のまとめと確認先
社内に共有したいので、一覧にしてもらえますか。
月ごとの作業と、確認に使える公開情報をまとめました。各国の基本情報や調査の数字は更新されるので、計画を立てるときに最新の記載を公式サイトで確認してください。
| 時期 | やること | 確認先 |
|---|---|---|
| 1 か月目 | 相手、節目、言語を決め、素材を集め始める | JETRO 国・地域別情報 https://www.jetro.go.jp/world/asia/ |
| 2 か月目 | 日本語の原稿を直し、現地語版を作って確認する | 現地法人の登記書類 (社名の表記)、本社の広報部 |
| 3 か月目 | 節目に合わせて配信し、掲載 URL を営業資料と採用ページに載せる | 進出先の国の祝祭日 |
| 採用の状況を調べるとき | 日系企業の採用環境を確認する | JETRO 2025 年度 海外進出日系企業実態調査 (アジア・オセアニア編) https://www.jetro.go.jp/world/reports/2025/01/231fa237934b5b0c.html |
ありがとうございます。国ごとの詳しい話は、どこを読めばいいですか?
言語の決め方は東南アジア向けプレスリリースは何語で出す?6 か国の公用語と判断の順番に、設立の発表の具体例はベトナム現地法人の設立プレスリリース|現地メディアに知らせる前に決める 5 項目とシンガポール統括会社の設立を現地で発表する方法|発表に入れる情報と順番にあります。配信したあとの点検は海外プレスリリースが掲載されない理由|東南アジアで点検する 3 つの原因を見てください。同じテーマの記事は現地での認知づくりにまとめています。
よくある質問
細かい点をいくつか確認させてください。設立登記がまだ終わっていない段階で、進出の発表を出してもいいですか?
出せますが、社名や所在地が変わる可能性がある段階では、書ける内容が限られます。進出を決めたことだけを本社から日本語で発表し、現地向けの発表は登記が終わって社名の表記が確定してからにする、という分け方が安全です。
複数の国に同時に進出する場合、発表は 1 本にまとめていいですか?
国ごとに分けるほうが読まれやすいです。現地の読者が知りたいのは自分の国で何が始まるかなので、最初の段落はその国の話にします。会社の紹介文や代表者のコメントは共通で使えるので、作業が国の数だけ増えるわけではありません。
進出から半年以上たってしまった会社は、もう発表を出せませんか?
出せます。設立登記の節目は過ぎていても、拠点の開設や移転、最初の契約、新しい商品の取り扱い開始など、次の節目があります。その発表の中で、いつ進出した会社なのかを 1 文で添えれば、進出の発表を兼ねられます。
参考にした公開情報
執筆・編集: 海外PR.jp 編集部 (VRI Creatives)。東南アジア・オーストラリア向けの、掲載保証付きプレスリリース配信サービスです。
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