東南アジア共通リリースの書き方・翻訳
海外プレスリリースが掲載されない理由|東南アジアで点検する 3 つの原因
公開 更新 約 5.6 千字
先月、東南アジア向けに初めてプレスリリースを配信しました。費用も稟議も通したのに、掲載された記事が 1 件も見つかりません。社内には「配信したのに何も起きなかった」と説明するしかなくて、困っています。
同じ状況で止まる担当者は少なくありません。まず先に伝えておくと、掲載がゼロだったのは、田中さんのやり方が悪かったからとは限りません。配信から掲載までの間にある仕組みを知らないまま出すと、誰でも同じ場所でつまずきます。
仕組み、ですか。配信すれば載るものだと思っていました。
そこが最初の分かれ目です。今日は「配信」と「掲載」の違いから始めて、載らなかったときに原稿、配信先、タイミングの 3 つをどう点検するか、次に何から直すかまで進めましょう。
「配信」と「掲載」は別の出来事
配信と掲載は、何が違うんでしょうか。
配信は、リリースを誰かに送る作業です。送った時点で完了します。掲載は、受け取った媒体が記事として公開することです。送るのは自社の作業で、載せるかどうかは受け取った側の判断になります。
日本でも、リリースを出したのに記事にならないことはありますね。
そのとおりです。日本でも同じ仕組みなのですが、海外だと「送った先がどこか」「何語で読まれるか」が見えにくくなり、原因を特定しにくくなります。だから、載らなかったときは、次の 3 つに分けて見るのが近道です。
| 原因の分類 | 見る対象 | 自分で確認できること |
|---|---|---|
| 原稿 | 送った文章そのもの | 誰が読んでも内容が分かるか。なぜその国で発表するのかが書いてあるか |
| 配信先 | 送った相手と言語 | 送り先の一覧を見られるか。原稿の言語と、読まれる言語が合っているか |
| タイミング | 発表日と配信日の関係 | 配信日が社内の発表日より遅れていないか。現地の休日と重なっていないか |
載らなかったときの考え方
- 配信は自社が送る作業、掲載は受け取った媒体の判断
- 原因は原稿、配信先、タイミングの 3 つに分けて点検する
- 確認できた事実だけで判断し、出典のない通説では決めない
3 つとも、自分たちで確認できそうですね。
はい。どれか 1 つが原因と決めつけないことが大事です。原因が複数重なっていることもあります。1 つずつ当てはめて、確認できた事実だけで判断していきます。
まず原稿から見ていきたいです。
原稿の点検: 日本の文章のまま送っていないか
うちの原稿は、日本語のリリースを翻訳会社に訳してもらったものです。これで問題ないと思っていました。
訳せているかどうかとは別に、見てほしい点が 2 つあります。1 つ目は、日本語の文の作りがそのまま残っていないかです。日本語は主語を省くので、訳したあとに「誰が何をしたのか」が分からなくなる場合があります。
確かに、社内向けの文章は主語がないことが多いです。
2 つ目は、その国で発表する理由が書かれているかです。本社が日本で発表した内容を訳しただけだと、現地の読者には「自分の国にどう関係があるのか」が見えません。現地に拠点や取引先があるなら、その関係を最初の段落に書きます。
| 点検項目 | 直し方の例 |
|---|---|
| 主語が省かれている | 日本語の段階で、社名や担当者名を補ってから翻訳に出す |
| 社内用語、略称が多い | 一般的な言葉に置き換える。略称は初出で正式名称を書く |
| 現地との関係が書かれていない | 拠点、取引先、販売予定など、その国との接点を冒頭に書く |
| 日付、金額、数量が日本の書き方のまま | 年を付ける。金額は通貨名で書く |
現地との関係というのは、たとえばどう書けばいいですか。
「タイの販売代理店と契約を結んだ」「ベトナムに拠点を開設した」のように、その国で起きた事実が最初の 1 文に入っていれば十分です。日本での発表をそのまま訳すのではなく、その国の読者向けに最初の段落を書き直すと考えてください。
原稿は直せそうです。次は、送った先の話ですね。
配信先の点検: 送った先と言語は合っているか
配信先は、サービスに任せたので詳しく知りません。
そこがまず確認点です。配信後に、どの媒体に送ったのかを見られるでしょうか。見られない場合、原因の切り分けができません。そのうえで、原稿の言語を確認します。
JETRO が国ごとに出している基本情報を並べると、言語は次のようになります。
| 国 | 言語 (JETRO の記載) | 公用語 (JETRO の記載) |
|---|---|---|
| インドネシア | インドネシア語 | 記載なし |
| ベトナム | ベトナム語、ほかに少数民族語 | ベトナム語 |
| タイ | タイ語 | 記載なし |
| マレーシア | マレー語、英語、中国語、タミル語 | マレー語 |
| フィリピン | フィリピノ語、英語、セブアノ語など | フィリピノ語、英語 |
| シンガポール | 英語、中国語 (北京語)、マレー語、タミル語 | 国語はマレー語 |
英語を公用語に挙げているのはフィリピンだけなんですね。シンガポールは言語欄に英語があります。
はい。言語の欄に英語が出てくるのは、マレーシア、フィリピン、シンガポールの 3 か国です。インドネシア、ベトナム、タイの欄には英語が出てきません。もし英語の原稿 1 本を 6 か国に送っていたなら、国によっては、読まれる言語と原稿の言語が合っていなかった可能性があります。ただ、英語だと載らない、とまでは言えません。点検項目のひとつとして見てください。
言語の選び方は、別の記事でも読めますか。
6 か国の言語と判断の順番は、東南アジア向けプレスリリースは何語で出す?6 か国の公用語と判断の順番にまとめています。
配信先の点検で確認すること
- 配信後に、送った媒体の一覧か、掲載された媒体の一覧を見られるか
- 国ごとに、原稿の言語がその国の言語と合っているか
- 1 本の原稿を複数の国にそのまま使い回していないか
- 「配信した」ことと「掲載の約束がある」ことを分けて、契約や申込内容を読み返したか
最後の項目が気になります。配信サービスを使えば、載ることまで含まれているわけではないんですか。
配信サービスによって条件が違います。送ることまでが契約なのか、掲載数の保証が付いているのかは、申込内容を見ないと分かりません。どの媒体に何件載るかを一般論として語ることはできないので、自社が結んだ契約で確認します。
原稿と配信先を見たので、最後はタイミングですね。
タイミングの点検: 発表日と配信日はずれていないか
配信したのは、日本で発表してから 2 週間後でした。
そこは確認したい点です。発表日と配信日が離れるほど、現地では「すでに古い話」になる場合があります。日本と同じ日、あるいは数営業日以内に出せたかを見てください。
現地の休日も関係しますか。
休日は国ごと、年ごとに違います。休日に重なると、確認が遅れる場合があるので、配信日を決める前に、その国の休日を調べてください。年によって日付が動くものもあります。
タイミングでつまずきやすい点
- 社内の承認に時間がかかり、配信が発表日の何週間も後になっている
- 6 か国に同じ日に出したが、その国で休日と重なる日があった
- 展示会や調印式などの日付が決まっているのに、日付から逆算せずに原稿を作り始めた
日付が決まっているものは、逆算が必要ということですね。
そうです。ここまでの 3 つを、順番に見ていく手順にします。
次に直す順番
3 つとも気になる点がありました。どれから直せばいいですか。
手間が少なく、結果が分かりやすい順に進めます。
手順
配信後の管理画面や報告書で、送った先と掲載の有無を確認する。分からない項目は、配信元に問い合わせる
国ごとに、原稿の言語がその国の言語と合っているかを JETRO の国別情報で確認する
最初の段落に、その国で起きた事実と現地との関係を書き直す。主語も補う
発表日から配信日までの日数を確認し、次回は日付から逆算して予定を組む
直した原稿を 1 か国だけに配信し、結果を見てから広げる
全部を一度に直さなくていいんですね。
はい。6 か国に同時に出し直すと、何が効いたのか分からなくなります。1 か国で試すと、原稿の直し方や社内の確認にかかる日数も分かります。
日本との違いは、ほかにありますか。
日本の国内広報では、普段読んでいる媒体の感覚で判断できる場面があります。海外の媒体については、その感覚をそのまま使えるとは限らないので、確認できる事実を 1 つずつ積むことが代わりになります。配信先、言語、日付の 3 つは、どれも自社で確認できる事実です。
手段が複数あると思うのですが、どう違いますか。
手段を比べる: 掲載の確認までを考える
配信の手段には、どんな選択肢がありますか。
自社で直接送る、配信サービスを使う、現地の PR 会社に委託する、の 3 つに分けられます。載らなかったときの確認のしやすさで比べると、次のとおりです。
| 手段 | 送り先の把握 | 掲載の確認 | 向いている場合 |
|---|---|---|---|
| 自社で直接送る | 自分で選ぶので把握できる | 自分で探す | 現地に広報担当がおり、記者の連絡先がある |
| 配信サービスを使う | サービスにより異なる | サービスにより異なる (保証や報告書の有無は契約で確認) | 現地に担当者がおらず、まず 1 本出したい |
| PR 会社に委託する | 委託先に確認する | 委託先の報告による | 継続して発信し、取材対応まで任せたい |
配信サービスは「サービスにより異なる」とありますが、具体的にはどう違うんでしょう。
たとえば海外PR.jp は、7 か国のどの国でも 10 媒体以上への掲載を保証する条件で、掲載された媒体名と URL の一覧がレポートで届きます。1 か国・1 配信は 50,000 円 (税別) で、国による差はありません。レポートの確認は、配信から 5 営業日が目安です。
時期によって、料金は変わりますか。
キャンペーン価格が出ている場合があります。最新の料金は公式サイトで確認してください。なお、掲載される媒体は、各国の総合ニュースサイト、ビジネス・経済系メディア、業界専門メディアが中心とされています。どの媒体に載るかは事前に決まっていません。
保証があれば、売上につながるとまでは言えないですよね。
はい。掲載はあくまで、社名や発表内容が現地語で検索できる状態になる、というところまでです。営業資料や採用資料に掲載記事の URL を載せるなど、使い道は自社で決めます。どの手段でも、配信と掲載の間にある 3 つの点検は、自社でも続けて行えます。
最後に、今日の内容を表にまとめてもらえますか。
点検のまとめ
原因の分類ごとに、確認先を一覧にします。事情は変わるので、国の基本情報は公式の最新版を確認してください。
| 点検の対象 | 確認すること | 確認先 |
|---|---|---|
| 原稿 | 主語、現地との関係、日付と金額の書き方 | 自社の原稿 |
| 配信先 | 送り先の一覧、原稿と現地の言語の一致 | 配信元の管理画面、契約内容 |
| 言語 (インドネシア) | インドネシア語 | https://www.jetro.go.jp/world/asia/idn/basic_01.html |
| 言語 (ベトナム) | ベトナム語 | https://www.jetro.go.jp/world/asia/vn/basic_01.html |
| 言語 (タイ) | タイ語 | https://www.jetro.go.jp/world/asia/th/basic_01.html |
| 言語 (マレーシア) | マレー語、英語、中国語、タミル語 | https://www.jetro.go.jp/world/asia/my/basic_01.html |
| 言語 (フィリピン) | フィリピノ語、英語など | https://www.jetro.go.jp/world/asia/ph/basic_01.html |
| 言語 (シンガポール) | 英語、中国語、マレー語、タミル語 | https://www.jetro.go.jp/world/asia/sg/basic_01.html |
| タイミング | 発表日と配信日の差、現地の休日 | 自社のスケジュール、各国の公的な情報 |
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よくある質問
いくつか質問させてください。配信したのに 1 件も載らなかったのは、失敗ですか。
失敗と決めるのは早いです。配信と掲載は別なので、まず送り先、原稿、日付の 3 つを点検してください。原因が分かれば、次の配信で直せます。
英語の原稿で出したのが原因でしょうか。
可能性はありますが、断定はできません。インドネシア、ベトナム、タイは、言語に英語が挙がっていません。国によっては現地語の原稿が合う場合があるので、国ごとに確認してください。
配信日が遅れた場合、もう載らないのでしょうか。
一概には言えません。ただ、発表日から日数が空くほど、読者にとっての新しさは下がる場合があります。次回は発表日から逆算して予定を組んでください。
社内には、どう説明すればいいですか。
「配信は完了したが、掲載は媒体の判断であり、原稿・配信先・タイミングの 3 点を点検した」と、確認できた事実を並べて報告してください。次の配信で何を変えるかも添えると、判断してもらいやすくなります。
参考にした公開情報
執筆・編集: 海外PR.jp 編集部 (VRI Creatives)。東南アジア・オーストラリア向けの、掲載保証付きプレスリリース配信サービスです。
本記事は各国の公的機関などの公開情報をもとに作成しています。各国のメディア事情・制度・祝祭日は変わることがあるため、 実施の前に最新の情報を確認してください。