タイのメディア事情|タイ語メディアと英字メディアの使い分けの考え方
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タイ向けの発信を任されました。日本では英語のリリースを出していて、タイでも英字のメディアに載れば十分かな、と考えています。そもそもタイにはどんなメディアがあって、英語とタイ語をどう使い分ければいいのか、判断材料がなくて困っています。
最初に決めておきたいのは、「英字メディアに載れば十分か」は、届けたい相手が誰かで答えが変わるという点です。今回は、資料で確かめられることを並べて、そこから使い分けの考え方を作っていきます。
確認できることだけ、というのは。
メディア事情は「タイでは英字紙が有力」「SNS が中心」のように、根拠のないまま語られがちです。なので今日は、資料で確かめられた話と、考え方としての目安を分けてお話しします。
タイのメディアを資料で確認する
まず、タイにどんな媒体があるのかを知りたいです。一覧のようなものはありますか?
国立国会図書館が、東南アジアの新聞をまとめた案内を出しています。各国の新聞のサイトや、調べるための道具を紹介しているものです。
タイの欄にはどんな新聞が載っていますか?
タイの項目は 3 つです。発行地と言語が書かれていて、マティチョン (Matichon) とサヤームラット (Sayāmrat) がバンコク発行のタイ語、バンコク・ポスト (Bangkok Post) がバンコク発行の英語です。
| 資料に載っている例 | 発行地 | 言語 |
|---|---|---|
| マティチョン (Matichon) | バンコク | タイ語 |
| サヤームラット (Sayāmrat) | バンコク | タイ語 |
| バンコク・ポスト (Bangkok Post) | バンコク | 英語 |
この 3 紙がタイの有力な新聞、ということですか。
いいえ、そこは気をつけてください。この表は資料に載っている例であって、有力な順や読者数の順ではありません。新聞の名前・発行地・言語・サイトを案内する資料で、部数や影響力は書かれていません。この記事でも、どの媒体が優れているかは扱いません。
分かりました。それでも、タイ語の新聞も英語の新聞もある、ということは読み取れますね。
はい。一覧から言えるのは、タイにはタイ語で書かれた新聞と、英語で書かれた新聞の両方があるところまでです。次に、言語が違うと何が変わるのかを見ていきます。
タイ語と英語で、読む人は違うのか
英語とタイ語では、読者が違うんでしょうか。
タイの言語・公用語はタイ語で、英語は挙がっていません。ただ、タイ語と英語の読者の数や属性を比べた数字は、見つかっていません。
では、読者の違いは分からないということですか。
数字で示すことはできません。ただ、考え方としては立てられます。言語が違えば、その言語で読む人が違うと考えられます。タイ語の記事は、タイ語で日常的にニュースを読む人に届き、英語の記事は、英語で読む人に届く。この前提で、届けたい相手が誰かを先に決めます。
届けたい相手というのは、たとえばどういう人ですか。
代理店候補の現地企業の担当者、採用の候補者、現地の消費者、タイ在住の日本人や外資系企業の関係者などです。この相手が、普段ニュースを何語で読むのかを考えます。
| 届けたい相手の例 | 普段読む言語の考え方 | 先に出す言語の目安 |
|---|---|---|
| 現地の代理店・取引先の担当者 | タイ語で検索する場合が多いと考えられる | タイ語 |
| 現地の採用候補者 | 同上 | タイ語 |
| 現地の消費者 | 同上 | タイ語 |
| 英語で仕事をする相手 (外資系企業など) | 英語の情報も読む場合がある | 英語 |
英語は 1 行だけなんですね。
表の右列は、あくまで考え方としての目安です。実際には、相手の会社が何語で情報を集めているかを、現地の取引先や拠点に聞いて確かめるのが確実です。言語を決める全体の順番は、東南アジア向けプレスリリースは何語で出す?6 か国の公用語と判断の順番で扱っています。ここでは詳しく繰り返しません。
英字メディアに載るだけだと、タイ語で検索した人には届かない場合がある、ということですね。
そう考えると整合します。英字メディアは、英語で読む相手に向けた手段と位置づけるのが安全です。次は、オンラインのニュースと SNS の関係です。
オンラインニュースと SNS は、どう関係するか
タイでは、ニュースをどこで読む人が多いんですか。新聞やテレビでしょうか。
ロイター研究所が毎年出しているニュース利用の調査に、タイの結果があります。補助的な資料として、数字を見てみましょう。
| 項目 (Reuters Institute 2025 年版) | 記載 |
|---|---|
| 毎週オンラインでニュースに接する人 | 88% |
| 18〜34 歳でソーシャルメディアを主なニュース源にする人 | 63% |
| ニュースに使われる主なソーシャルメディア | Facebook、YouTube、Line、TikTok |
| ニュースに TikTok を使う人 | 49% (+10 ポイントと記載) |
| オンラインニュースの好み | 動画で見たい人が 43%、読みたい人が 32% |
オンラインで読む人が 88% というのは、かなり高いですね。
ただ、この調査には注意書きがあります。回答者は教育水準が高めの都市部の人が中心で、オンラインや SNS に頼る傾向が強いそうです。88% はタイ全体の数字ではなく、この調査の回答者の数字として読んでください。
地方の人や高齢の人は、また違うかもしれないわけですね。
そう考えられます。そのうえで、リリースの使い方に当てはめると、オンラインのニュース記事と SNS は別々のものではなく、つながっていると考えられます。ニュースサイトに載った記事の URL を、自社の SNS やサイトで紹介する、という使い方ができるからです。
オンラインニュースと SNS の使い方
- 配信したリリースは、掲載された記事の URL を自社の SNS やサイトで紹介する材料になる
- 18〜34 歳では SNS が主なニュース源という回答が多いので、若い層に届けたいなら SNS での紹介も計画に入れる
- オンラインでは動画で見たい人が読みたい人より多いという記載があるので、短い動画を添える案も検討できる
- ただし 88% や 63% は都市部で教育水準が高い回答者の調査なので、全国の数字とは扱わない
動画を作る余裕はないので、まずは記事の URL を SNS で紹介するところから、ですね。
それで十分です。ここまでで、媒体と SNS の関係は見えました。次に、実務で最も神経を使う、王室と宗教に関わる表現の話に移ります。
王室・宗教に関わる表現は、現地の担当者に確認してもらう
タイは王室や宗教に配慮が要る、と聞いたことがあります。何に気をつければいいのか、見当がつきません。
この話題は、評価や一般論を書くと誤りが出やすい分野です。ですので、この記事では内容や背景の解説はしません。実務として言えることは、1 つだけです。
1 つだけ、ですか。
王室や宗教に関わる表現は、現地で確認が要る事項なので、原稿と写真はタイ語を読める現地の担当者に確認してもらう、という進め方です。日本の本社で判断せず、現地の拠点や代理店、タイ語が読める担当者に、配信の前に見てもらいます。
原稿だけでなく、写真もですか。
はい。リリースに添える写真や、商品のパッケージ、イベントの背景に写るものも対象にします。王室や宗教に関わるかもしれないと少しでも感じたら、現地の担当者に聞く、という運用が安全です。
配信前に現地の担当者へ回すもの
- タイ語の原稿の全文 (翻訳した場合は翻訳後のもの)
- リリースに添える写真・図版と、商品のパッケージ
- 日本語の原稿にある、日本の習慣にもとづく表現や比喩
- 判断に迷う点は、本社で決めずに現地の担当者に質問して残す
本社で「たぶん大丈夫」と決めない、ということですね。
そのとおりです。確認する人の見つけ方は、現地に拠点がなければ、取引のある代理店や翻訳会社に聞く方法があります。この確認の話は、次の「手順」の中にも入れておきます。
タイ語と英語を使い分ける手順
ここまでの話を、実際の手順にするとどうなりますか。
流れで示すと次のようになります。
手順
届けたい相手を決める。現地の企業なのか、採用候補者なのか、消費者なのか、英語で仕事をする相手なのか
その相手が普段読む言語を、現地の拠点や取引先に聞いて確かめる
タイ語を主、英語を補いにするかを決める。タイ語で検索する相手が中心なら、タイ語の原稿を先に用意する
日本語の原稿を直す。主語を補い、タイで発表する理由を最初の段落に書く
タイ語の原稿と写真を、タイ語を読める現地の担当者に確認してもらう
配信したあと、掲載された記事の URL を自社の SNS やサイトで紹介する
タイ語で出す理由は、前の記事にあったのと同じですか。
基本は同じです。公用語がタイ語なので、タイ語で検索する相手に届けるにはタイ語の原稿が要る、という話は東南アジア向けプレスリリースは何語で出す?にまとめてあります。ここでは使い分けに絞ります。
英語は、出さなくていいんでしょうか。
出さなくていい、とは言えません。英語で仕事をする相手に届けたい場合は、英語の原稿も役に立ちます。ただ、タイ語と英語を最初から両方用意すると手間が 2 倍になるので、届けたい相手がいる言語から始め、反応を見てもう一方を足す進め方が現実的です。
日本との違いも教えてください。日本だと、リリースは 1 本を日本語で出せば済みますよね。
そこが大きな違いです。日本では日本語のリリース 1 本を出す、という発想になりがちです。タイでは、タイ語と英語で読む人が違うと考えられるので、出す言語を決めること自体が、届ける相手を決めることになります。
タイ語と英語の使い分けの考え方
- 言語が違えば読む人が違うと考えられるので、先に届けたい相手を決める
- タイ語で検索する相手が中心なら、タイ語を先に出す
- 英語で仕事をする相手に届けたいときは、英語の原稿を足す
- 読者の数を比べた数字は確認できていないので、断定せず現地への聞き取りで補う
「どの分野の発表なら載りやすいか」も知りたいのですが。
そこは分かりませんでした。日本企業の発表が載りやすい分野を扱った資料が見つかっていないんです。「この分野は載りやすい」と言うと根拠のない話になるので、分野についての断定は避けます。
では、どう判断すればいいですか。
手がかりは 2 つあります。1 つは、届けたい媒体のウェブサイトを自分で開いて、どんな見出しの記事が載っているかを確認することです。もう 1 つは、現地の拠点や代理店に、自社の発表がどんな読者に関心を持たれそうかを聞くことです。載るかどうかは媒体の判断なので、事前に約束できるものではありません。
分かりました。ここまでで判断の材料は揃いました。実際に配信する手段は、どんな選択肢がありますか?
配信する手段を比べる
タイ語の原稿ができたとして、どうやって媒体に届けるんでしょう。
手段は 3 つに分けられます。自社で媒体に直接送る、配信サービスを使う、現地の PR 会社に委託する、です。
| 手段 | タイ語の原稿 | 向いている場合 |
|---|---|---|
| 自社で直接送る | 自社で用意する | 現地に広報担当がいて、媒体の連絡先を持っている |
| 配信サービスを使う | サービスにより翻訳オプションがある | 現地に広報担当がおらず、まず 1 本出してみたい |
| PR 会社に委託する | 委託先が作ることが多い | 継続して発信し、取材対応まで任せたい |
現地に広報担当がいないので、配信サービスが近そうです。タイ語の翻訳も頼めるものはありますか?
たとえば海外PR.jp は、翻訳オプションが英語、タイ語、ベトナム語、インドネシア語の 4 言語です。タイ向けにタイ語で出す場合、配信が 1 か国 1 配信で 50,000 円 (税別)、翻訳が 1 言語 20,000 円 (税別) で、1 か国に 1 言語なら合わせて 70,000 円 (税別) です。
掲載については、どうなっていますか。
タイを含む対応国で、10 媒体以上への掲載が保証されています。掲載された媒体名と URL の一覧がレポートで届き、目安は配信から 5 営業日です。この保証は海外PR.jp のサービス条件で、どの媒体に載るかは約束されません。時期によってキャンペーン価格の場合があるので、最新の料金は公式サイトで確認してください。
翻訳を頼んだ場合も、現地の担当者に見てもらう手順は残るんですよね。
はい。翻訳を誰が作った場合でも、王室や宗教に関わる表現の確認は、タイ語が読める現地の担当者に回します。これは手段によらず共通の手順です。
使い分けのまとめ
最後に、社内で共有できる形にまとめてもらえますか。
場面ごとの判断と、確認先をまとめました。メディア事情や統計は更新されるので、計画を立てるときに最新の公式情報を確認してください。
| 場面 | 判断の考え方 | 確認先 |
|---|---|---|
| 現地の企業・採用候補者・消費者に届けたい | タイ語を先に出す | JETRO タイ 概況・基本統計 (https://www.jetro.go.jp/world/asia/th/basic_01.html) |
| 英語で仕事をする相手に届けたい | 英語の原稿を用意する | 現地の拠点・取引先への聞き取り |
| 媒体の候補を探したい | 資料に載っている例から始め、サイトを自分で開く | 国立国会図書館リサーチ・ナビ「東南アジアの新聞」(https://ndlsearch.ndl.go.jp/rnavi/asia/post_150) |
| ニュースの読まれ方を知りたい | 都市部・高学歴の回答者に偏る調査であることを踏まえる | Reuters Institute デジタルニュースレポート 2025 年版 (https://reutersinstitute.politics.ox.ac.uk/digital-news-report/2025/thailand) |
| 王室・宗教に関わるかもしれない表現がある | 原稿と写真をタイ語が読める現地の担当者に確認してもらう | 現地の拠点・代理店 |
関連する記事は、どこから探せますか?
よくある質問
いくつか細かい質問をさせてください。英字メディアに載るだけでは足りませんか?
届けたい相手が英語で読む人なら足りる場合があります。タイ語で検索する相手に届けたいなら、タイ語の記事も必要だと考えられます。読者の数を比べた数字は今回の資料では確認できていないので、相手から逆算して決めてください。
タイ語の原稿は、翻訳で作ってもいいですか?
翻訳で作ることはできます。ただし翻訳後のタイ語は、現地の担当者に読んでもらい、表記や表現を確認してから配信します。
SNS だけで発信する方法もありますか?
ロイター研究所の 2025 年版では、ニュースに使われる主なソーシャルメディアとして Facebook、YouTube、Line、TikTok が挙がっています。ただ、この調査の回答者は都市部で教育水準が高い人に偏っています。SNS を中心にするかどうかは、届けたい相手に合わせて決めてください。
日本企業の発表が載りやすい分野はありますか?
そこは分かりませんでした。媒体のサイトで過去の記事の見出しを確認し、現地の担当者に相談するのが手がかりになります。
参考にした公開情報
執筆・編集: 海外PR.jp 編集部 (VRI Creatives)。東南アジア・オーストラリア向けの、掲載保証付きプレスリリース配信サービスです。
本記事は各国の公的機関などの公開情報をもとに作成しています。各国のメディア事情・制度・祝祭日は変わることがあるため、 実施の前に最新の情報を確認してください。