東南アジア共通リリースの書き方・翻訳
プレスリリース翻訳前の日本語原稿の直し方|東南アジア向けに先に直す 6 か所
公開 更新 約 6.7 千字
国内向けに出した日本語のプレスリリースを、そのままインドネシア語とタイ語に翻訳してもらいました。ところが現地の代理店から「意味が通らない文がある」「長すぎる」と言われてしまって。翻訳の質が低かったんでしょうか?
翻訳者の腕より、翻訳に出す前の日本語原稿に原因があることが多いです。日本の読者なら補って読める部分が、原稿に書かれていないまま翻訳に回っている、という状態です。
日本語としては普通に読める原稿だったんですが。
日本語として読めることと、訳せることは別です。直す場所は 6 か所に絞れます。
翻訳したプレスリリースの意味が通らなくなる理由
まず、なぜ日本語では通じる原稿が、訳すと通じなくなるんですか?
翻訳者は、原稿に書いていないことを足せないからです。国内向けのリリースは、読む人が日本の会社や制度をある程度知っている前提で書かれています。主語がなくても「この会社の話だな」と分かりますし、「プライム上場」「年度内」と書けば説明なしで伝わります。
国内の記者には説明がいらないんですね。
はい。ところが翻訳者は、主語のない文に出会うと、誰の話かを推測して訳すことになります。文化庁の文化審議会がまとめた文章の手引きにも、日本語は主語が省略されることがあり、それで誤解が生じることもある、という指摘があります。推測が外れると、訳文は文法的に正しくても内容が違ってしまいます。
「長すぎる」と言われたのは、どうしてでしょう。
一文が長いことと、前置きが多いことの 2 つが考えられます。経緯の説明や挨拶から始まる原稿は、訳しても同じ順番のままです。現地の記者が最初に知りたい「この国で何が起きるのか」が、後ろのほうに回ってしまいます。
日本では、沿革や思いから書き始めても読んでもらえる気がしていました。
日本では社名を知っている記者が読むので、それでも通じます。現地では社名を初めて見る人が読みます。そこが日本との大きな違いです。
原稿の問題と翻訳の問題を分けて考える
- 主語、社内用語、日本の制度名は、翻訳者が正しく推測できるとは限らない
- 長さと順番は、翻訳では変わらない。日本語の段階で決まる
- 数字と単位は、訳し間違いが起きると発表内容そのものが変わる
翻訳会社を替える前に、原稿を見直すのが先なんですね。では、原稿のどこを直せばいいですか?
日本語原稿で先に直す 6 か所
6 か所を順番に教えてください。
表にするとこうなります。
| 直す場所 | 国内向け原稿でよくある書き方 | 直し方 |
|---|---|---|
| 1 段落目 | 会社の経緯や思いから始まる | その国で何をするのか、なぜその国なのかを先に書く |
| 主語と文の長さ | 主語がない。一文に話題がいくつも入る | すべての文に主語を入れ、一文の話題を 1 つにする |
| 社内用語・略語 | 部署名、社内の呼び名、期の略称 | 一般的な言葉に置き換える。略語は元の言葉を書く |
| 日本の制度名 | 上場区分、認定、補助金の名前 | 何をする制度かをひとこと足す |
| 数字・単位・日付 | 元号、年度、万・億、坪 | 西暦と国際的な単位にそろえ、通貨を明記する |
| 会社概要 | 国内向けの定型のまま | 国名、事業内容、現地の拠点を入れて書き直す |
どれも日本の読者なら補える情報を、原稿に書き足していく作業です。読まれ方がいちばん変わるのは 1 段落目なので、そこから説明します。
1 段落目に「なぜその国で発表するのか」を書く
1 段落目は、日本語のリリースでも要点を書いているつもりです。何を変えるんですか?
書く内容を、日本の読者向けから現地の読者向けに入れ替えます。国内向けの 1 段落目は「当社は新製品を発売します」で足ります。現地向けでは、その国で何が始まるのか、なぜその国なのかを 1 段落目に書きます。
たとえばどんな情報でしょう。
その国での発売日、販売する代理店や店舗、現地法人や工場の所在地です。インドネシア向けなら「2027 年 3 月からインドネシアで販売を始める」といった事実が先に来ます。
日本での実績は、書かないほうがいいんですか?
書いて構いません。ただ、順番は後ろです。結論を早めに示して理由や詳細を続ける、という順番は文化庁の手引きでも勧められています。日本での実績は 2 段落目以降に置いてください。
現地との関係が特にない発表の場合はどうでしょう。
販売先を探している、展示会に出る、採用を始める。その国で出す理由が何かしらあるはずなので、先にそれを言葉にしてください。理由が 1 文で書けない発表は、翻訳しても現地の記者に関係のない話として読まれるおそれがあります。
1 段落目に入れる現地との関係
- その国で何をするのか (発売、拠点の開設、提携、出展、採用)
- いつからか (西暦の年月日)
- その国のどこでか (都市名、店舗、代理店、現地法人の名前)
1 段落目が決まれば、残りは文ごとの直しになりそうですね。
主語・社内用語・日本の制度名の直し方
主語を補うというのは、全部の文に「当社は」と書くということですか?
「当社」ではなく、社名で書いてください。「当社」「弊社」「同社」が混ざると、翻訳者はどの会社のことかを文ごとに判断することになります。
文の長さには目安がありますか?
文化庁の手引きでは、一文が 50〜60 字ほどになったら読みにくくなっていないか意識する、という目安が示されています。一文の話題は 1 つにして、「〜し、〜であり、〜のため」と続く文は切り、それぞれに主語を入れます。
社内用語は、自分では気づきにくそうです。
書いた本人には普通の言葉に見えるので、見落としやすいところです。部署の略称、「2Q」「下期」のような期の呼び方、カタカナの業界用語が代表です。出入国在留管理庁と文化庁が作ったやさしい日本語のガイドラインでも、略語を使わないこと、外来語をできる限り使わないことが挙げられています。外来語は原語と意味が違うものが多いからです。
| 元の書き方 | 翻訳で困る点 | 直した書き方の例 |
|---|---|---|
| 販売を開始しました | 誰が販売するのか書かれていない | (社名) は、2027 年 3 月 1 日に販売を始めました |
| 2Q より量産に入ります | 期の区切りは会社ごとに違う | 2027 年 7 月から量産を始めます |
| ○○認定を取得 | 何の認定かが分からない | 日本政府が (内容) を認める制度「○○認定」を取得しました |
| 弊社スキームを活用 | 外来語が原語と違う意味で使われている | (社名) の販売の仕組みを使います |
日本の制度名は、訳さずに残していいんですね。
名前は残して、何をする制度かをひとこと足します。上場している市場、認定、補助金、規格の名前などです。現地の読者はその制度を知りません。「日本の証券取引所に上場している」「日本政府の認定を受けた」と、誰が何を認めたのかを書けば足ります。
直したつもりで残りやすいもの
- 「同製品」「本件」「上記」などの指示語が、何を指すのか離れた場所にある
- 「〜しないわけではない」のような二重否定
- 受け身の文 (「発売されます」) で、誰が行うのかが消えている
言葉の直しは分かりました。数字のほうも、日本の書き方のままでは通じないものがありそうです。
数字・単位・日付と国ごとの通貨
数字は世界共通だと思っていました。どこが問題になりますか?
数字そのものではなく、単位と区切り方です。日本語は「万」「億」と 4 桁ごとに区切りますが、英語は thousand、million と 3 桁ごとに数えます。「1 億 2,000 万円」のような書き方は、訳すときに桁を取り違えるおそれがあります。原稿の段階で「1 億 2,000 万円 (120,000,000 円)」と数字だけの表記を併記しておくと、翻訳者も確認する人も照合しやすくなります。
金額は円のままでいいんでしょうか。
円で発表した数字は、円のまま書いてください。現地で売る商品の価格のように、読者が自分で判断する金額は現地通貨でも書きます。国ごとに通貨が違い、桁の大きさも違います。
| 国 | 翻訳先の言語の目安 | 通貨 | 1 米ドルあたり (JETRO 掲載) |
|---|---|---|---|
| インドネシア | インドネシア語 | ルピア | 16,782 ルピア (2025 年、期末平均) |
| ベトナム | ベトナム語 | ベトナム・ドン | 25,121 ドン (2025 年、期中平均) |
| タイ | タイ語 | バーツ | 35.3 バーツ (2024 年、期中平均) |
| マレーシア | 英語から始める | リンギ | 4.28 リンギ (2025 年、期中平均) |
| フィリピン | 英語 | ペソ | 57.5 ペソ (2025 年、期中平均) |
| シンガポール | 英語 | シンガポール・ドル | 1.2841 シンガポール・ドル (2025 年、期中平均) |
ルピアやドンは桁がずいぶん大きいですね。
1 米ドルが約 1 万 6,800 ルピア、約 2 万 5,100 ドンですから、円の感覚で桁を見ると間違えやすいです。現地通貨の金額を書くときは、いつの時点の相場で換算したのかを原稿に書いておいてください。
日付は「令和 8 年」と書いている箇所があります。
元号は西暦に直します。令和 8 年は 2026 年です。やさしい日本語のガイドラインでも、元号を使わずに西暦を使うこと、年月日の表記に「/」を使わないことが挙げられています。「2027 年 3 月 1 日」と省略せずに書くのが安全です。
「年度」はどうですか。うちは 4 月始まりです。
年度は会社や国によって始まる月が違うので、「2026 年 4 月 1 日から 2027 年 3 月 31 日まで」のように期間で書くと、読む人が同じ期間を思い浮かべられます。面積の「坪」や「畳」も、平方メートルに換算して書いてください。
日本でしか通じない単位が意外と多いんですね。本文の直しは見えてきたので、リリースの最後に付ける会社概要も確認させてください。
会社概要の書き方と原稿の長さ
会社概要は、国内向けのものをそのまま訳せばいいですか?
ここは書き直したほうがいい部分です。国内向けの会社概要は、社名、所在地、代表者、設立、資本金を並べた形が多いと思います。現地の読者は社名を初めて見るので、何をしている会社なのかを 1〜2 文で書くことが先です。
入れる項目を教えてください。
社名の英字表記、本社の所在地、設立した年、事業の内容、その国にある拠点や代理店、問い合わせ先です。所在地は「大阪市」で終わらせず「日本・大阪」と国名から書きます。問い合わせ先は、英語か現地語で返信できる窓口にしてください。
原稿が長いと言われた件は、どこを削ればいいですか?
代表者の挨拶や沿革は短くして構いません。原稿全体の長さを減らすときは、経緯の前置き、同じ内容の言い換え、根拠のない形容の順に削ると、発表の中身を落とさずに済みます。
削る順番があると判断しやすいです。実際の作業はどう進めればいいですか?
翻訳に出すまでの手順
作業の順番に並べます。国内向けの原稿を上書きせず、現地向けの日本語原稿を別に作ってください。
手順
届けたい相手と国を決め、1 段落目に「その国で何をするのか」「なぜその国なのか」を書く
すべての文に社名で主語を入れ、50〜60 字を目安に文を区切る
社内用語、略語、外来語、日本の制度名に印を付け、言い換えるか説明を足す
日付を西暦に、単位を国際的な単位にそろえ、金額の通貨と換算の時点を書く
会社概要を現地の読者向けに書き直し、社名・商品名・人名の英字表記の一覧を添えて翻訳に出す
訳文が戻ったら、数字、日付、固有名詞を日本語原稿と 1 つずつ照合する
最後の照合は、現地語が読めなくてもできますか?
数字と日付、アルファベットの固有名詞は照合できます。文の意味が合っているかは、現地の拠点や代理店など、その言語を読める人に一度見てもらってください。
原稿の準備は見えてきました。翻訳そのものは、どこに頼むのがいいでしょうか。
翻訳の頼み方を比べる
日本語原稿から現地語にする方法には、どんな選択肢がありますか?
大きく 3 つです。どの方法でも、日本語原稿を直しておく意味は変わりません。
| 方法 | 日本語原稿からの進め方 | 向いている場合 |
|---|---|---|
| 現地拠点・代理店に訳してもらう | 日本語が読める担当者がいれば直接。いなければ英語を経由 | 現地に広報を任せられる人がいる |
| 翻訳会社に頼む | 日本語から現地語へ。対応言語と報道文の経験を確認する | 他の文書の翻訳も頼んでいる |
| 配信サービスの翻訳オプションを使う | サービスにより日本語原稿のまま入稿できる | 翻訳と配信を一度に済ませたい |
日本語のまま渡せるサービスもあるんですね。
たとえば海外PR.jp は、日本語原稿のまま入稿でき、翻訳オプションで英語、タイ語、ベトナム語、インドネシア語の 4 言語にできます。日本語原稿しかない会社は、英語版を自分で用意する工程を省けます。
費用はどのくらいですか?
翻訳が 1 言語 20,000 円 (税別)、配信が 1 か国 1 配信で 50,000 円 (税別) です。1 か国に 1 言語で出す場合は、合わせて 70,000 円 (税別) になります。配信した国では 10 媒体以上への掲載が保証されます。時期によってキャンペーン価格の場合があるので、最新の料金は公式サイトで確認してください。
翻訳を任せられるなら、原稿は直さなくてもよさそうに思えますが。
表現は整えてもらえても、原稿に書かれていない事実は誰にも足せません。その国で発表する理由や制度の説明は、発表する会社にしか書けません。どの方法で訳す場合も、日本語原稿に事実を書き切っておくことが先になります。最後に、翻訳に出す直前に確認する項目を表にまとめます。
翻訳前のチェック表
社内でそのまま使える形だと助かります。
こちらの表です。手引きや各国の基本情報は更新されるので、最新の内容は公式のページで確認してください。
| 確認する項目 | 合格の目安 | 参考になる公式情報 |
|---|---|---|
| 1 段落目 | その国で何を、いつ、どこで行うかが書かれている | https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kokugo/hokoku/pdf/93731901_01.pdf |
| 主語と文の長さ | すべての文に社名の主語がある。一文の話題が 1 つ | 同上 (文化庁「公用文作成の考え方」) |
| 社内用語・略語・外来語 | 一般的な言葉か、説明つきになっている | https://www.moj.go.jp/isa/support/portal/plainjapanese_guideline.html |
| 日付・年度 | 西暦で、期間は開始日と終了日で書かれている | 同上 (やさしい日本語ガイドライン) |
| 金額・通貨 | 数字だけの表記を併記し、通貨と換算の時点がある | https://www.jetro.go.jp/world/asia/ (各国の概況・基本統計) |
| 会社概要 | 国名、事業内容、現地の拠点、返信できる連絡先がある | (自社で確認) |
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よくある質問
いくつか細かい質問をさせてください。英語版を先に作って、そこから現地語に訳すほうがいいですか?
どちらでも進められます。英語を経由する場合も、もとになる日本語原稿で主語と用語を直しておかないと、英語版に入った推測がそのまま現地語に引き継がれます。
原稿はどのくらいの長さにすればいいですか?
何字までという決まった基準は見つかっていません。目安にできるのは文の長さのほうで、一文が 50〜60 字ほどになったら区切れないかを見ます。
国内向けと現地向けで、発表の内容が変わってしまっても問題ありませんか?
事実と数字は同じにして、順番と説明の量を変える、と考えてください。現地向けの原稿を作ったら、金額、日付、提携先の名前を国内向けの原稿と突き合わせてから翻訳に出すのが安全です。
参考にした公開情報
執筆・編集: 海外PR.jp 編集部 (VRI Creatives)。東南アジア・オーストラリア向けの、掲載保証付きプレスリリース配信サービスです。
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