東南アジア共通リリースの書き方・翻訳
海外プレスリリースの書き方|初めてでも東南アジア向けの初稿を作る手順
公開 更新 約 6.2 千字
東南アジアの代理店向けに、新しい製品の発表を出すことになりました。ただ、うちには広報の担当がいなくて、私自身プレスリリースを書いたことがありません。何から手を付ければいいですか?
順番は 3 つです。まずリリースに入れる要素を知る、次に海外の読み手のために情報を足す、最後に初稿を作って人が確かめる。初稿は AI に手伝わせても構いません。
AI に書かせてよいなら、すぐ終わりそうに思えますが。
文章の形はすぐにできます。ただ、AI に任せられるのは文章の組み立てまでで、中身の事実を確かめるのは人の仕事です。今日は、初めての人がどこで止まるのかを見てから、初稿を作る手順まで進めます。
初めてのプレスリリースで手が止まる理由
書こうとして画面を開いても、最初の 1 行が出てきません。文章が苦手なせいでしょうか?
文章力の問題ではないことが多いです。止まる理由は、何を書く文書なのかが決まっていないことにあります。営業資料や広告と同じ調子で書こうとすると、どこまで書けばよいかが分からなくなります。
広告とは違うものなんですか?
違います。中小企業基盤整備機構 (中小機構) のサイト J-Net21 の説明だと、広告は企業が掲載費を払って自分たちの内容を載せるもの、プレスリリースは媒体に向けて情報を発信するものです。記事にするかどうか、どう書くかは媒体の側が決めるので、企業が訴えたい内容がそのまま載るとは限りません。
売り込みの文章ではなく、記事の材料を渡す文書なんですね。
その理解で合っています。材料として渡すので、形容詞よりも事実を並べます。もう 1 つ、専任の広報がいない会社では、発表の中身を知っている人と書く人が別々で、日付や数字が社内で決まっていないまま書き始めることがあります。これも手が止まる原因です。
思い当たります。発売日がまだ仮のままでした。
ここで止まる会社は多いです。書く前に決めることが残っているだけなので、要素を順に見ていけば、何が足りないかが分かります。
プレスリリースの書き方の基本|5 つの要素
リリースには、何をどの順番で書くんですか?
よく使われる並べ方は、見出し、リード、本文、会社概要、問い合わせ先の 5 つです。公的に決まった規格があるわけではありませんが、この順に書けば読み手が迷いません。
| 要素 | 書く内容 | J-Net21 が挙げている点 |
|---|---|---|
| 見出し | 発表の中身を 1 行で | タイトルは伝えたいことを 1 つに絞る |
| リード | 誰が・何を・いつ・どこで、を最初の段落に | 記載なし (この記事での補足) |
| 本文 | 目的、内容、経緯を事実で | 本文は 5W1H で事実を正確に書く。専門用語は極力使わない |
| 会社概要 | 事業内容、所在地、設立年など | 製品の説明と会社紹介を明確にする |
| 問い合わせ先 | 担当部署、担当者、連絡方法 | メディアからの問い合わせ先を明確にする |
リードというのは初めて聞きました。本文とは別に書くんですか?
本文の最初の段落のことです。見出しの次に読まれる場所なので、「誰が、何を、いつ、どこで」をこの段落だけで言い切ります。経緯や背景は、その後ろの段落に回します。
見出しは、いくつか伝えたいことがある場合はどうしますか?
1 つに絞ります。新製品の発売と代理店の募集を両方伝えたいなら、見出しは発売、代理店の募集は本文の後半、という分け方です。J-Net21 も、新聞の見出しと同じように絞り込むことを勧めています。
5 つの要素を書く前に決めておくこと
- 見出しにする発表を 1 つ選ぶ
- 日付、金額、数量など、社内で確定している数字だけを書き出す
- 会社概要は一度作れば、次のリリースでも使い回せる
- 問い合わせ先は、返信できる人の名前と連絡方法にする
なるほど。型があると分かると、書き始めやすくなります。
ここまでは国内向けでも同じです。次に、海外の読み手のために足す情報を見ていきます。
海外向けのプレスリリースで足す情報
日本語で書いたものを翻訳すれば、海外向けになるわけではないんですか?
翻訳だけでは足りない箇所があります。日本国内なら「大阪の機械メーカー」と書けば場所も会社の規模も想像してもらえますが、東南アジアの読み手は、日本の地名も社名も知らない前提で読みます。日本の読者なら書かなくても通じる情報を、文字にして足す必要があります。
具体的には、どこに何を足しますか?
5 つの要素それぞれに足す場所があります。次の表は、公的な決まりではなく、この記事での提案です。
| 要素 | 国内向けの書き方 (例) | 海外向けに足す情報 |
|---|---|---|
| 見出し | 新製品を発売 | どの国で発売するのか、国名を入れる |
| リード | 4 月 1 日に発売 | 日付に年を付ける。場所は国名と都市名で書く |
| 本文 | 価格は 10 万円 | 金額に通貨名を付ける。その国での買い方、取扱先を書く |
| 会社概要 | 本社は大阪市 | 本社が日本にあること、社名の英字表記、事業の説明を足す |
| 問い合わせ先 | 電話番号と部署名 | 対応できる言語、メールアドレス、電話は国番号から書く |
金額に通貨名、というのは見落としそうです。
日本にいると「円」と書くだけで済みますが、6 か国は通貨がすべて違います。円建ての金額なら「日本円」と分かるように書きます。現地通貨に直した金額を添えるなら、いつの相場で換算したのかも書いておくと、読み手が誤解しません。
6 か国の言語と通貨を並べて見られますか?
日本貿易振興機構 (JETRO) の国別の基本情報から抜き出すと、こうなります。
| 国 | 言語・公用語 | 通貨 | 出典 |
|---|---|---|---|
| インドネシア | インドネシア語 | ルピア | JETRO 概況・基本統計 (2026 年 7 月 1 日更新) |
| ベトナム | ベトナム語、ほかに少数民族語 (公用語はベトナム語) | ベトナム・ドン | 同 (2026 年 7 月 1 日更新) |
| タイ | タイ語 | バーツ | 同 (2026 年 6 月 30 日更新) |
| マレーシア | マレー語、英語、中国語、タミル語 (公用語はマレー語) | リンギ | 同 (2026 年 8 月 19 日更新) |
| フィリピン | フィリピノ語、英語、セブアノ語など (公用語はフィリピノ語と英語) | ペソ | 同 (2026 年 7 月 2 日更新) |
| シンガポール | 公用語は英語、中国語 (北京語)、マレー語、タミル語 | シンガポール・ドル | 同 (2026 年 6 月 18 日更新) |
言語もこれだけ違うと、どの言葉で出すかも決めないといけませんね。
はい。言語の決め方は東南アジア向けプレスリリースは何語で出す?6 か国の公用語と判断の順番で扱っています。初稿の段階では、まず日本語で 5 つの要素をそろえ、海外向けの情報を足すところまでを済ませてください。
日本語で先に固めるんですね。では、その初稿を AI で作る場合の手順を教えてください。
AI で初稿を作る手順と、人が確かめる箇所
AI には、どう頼めばいいですか。「新製品のリリースを書いて」と入れるだけではだめでしょうか?
それだと、AI は足りない情報を自分で補って書きます。もっともらしい発売日や、実在しない実績が入ることがあります。先に人が「事実メモ」を作り、それだけを材料にして書かせるのが安全です。
事実メモには何を書きますか?
5 つの要素に入る事実を、文章にせず書き出したものです。誰が、何を、いつ、どこで、いくらで、なぜ。それに会社概要と問い合わせ先です。決まっていない項目は空欄のままにして、「未定」と書いておきます。
手順
事実メモを作る。発表の中身、日付、金額、数量、社名や商品名の正式な表記を書き出す。未定の項目は「未定」と書く
AI に事実メモを渡し、見出し・リード・本文・会社概要・問い合わせ先の順で書くよう頼む。「メモに無い情報は足さない」と書き添える
出てきた初稿と事実メモを並べ、数字・固有名詞・日付を 1 つずつ照らし合わせる
メモに無い文 (実績、評価、代表者のコメントなど) を消すか、社内で確認してから残す
海外向けに足す情報 (国名、通貨名、年、対応言語) が入っているかを確かめ、日本語の原稿を確定させる
確定した日本語を翻訳に回す。翻訳後も、数字・固有名詞・日付だけはもう一度照らし合わせる
確かめるのは、数字と固有名詞と日付の 3 つでよいのですか?
この 3 つに絞るのは、この記事での提案です。国のガイドラインがこの 3 つを名指ししているわけではありません。総務省と経済産業省の AI 事業者ガイドラインが AI を使う側に求めているのは、出力の精度とリスクの程度を理解し、リスク要因を確認したうえで使うことです。リリースの場合、間違えたときに読み手への影響が大きいのがこの 3 つなので、最初に見る場所として挙げています。
文章の言い回しより、事実の方を優先するんですね。
はい。言い回しは後から直せますが、間違った発売日が現地の媒体に載ると、訂正を頼む手間がかかります。
AI の初稿でつまずきやすいところ
- 事実メモに無い数字 (シェア、導入社数、順位など) が入っていないか
- 代表者や担当者のコメントを、AI が作った文のまま載せていないか。コメントは本人の確認を取る
- 社名・商品名・人名の英字のつづりが、自社サイトや名刺の表記と合っているか
- 日付に年が付いているか。発表日と発売日が入れ替わっていないか
- 発表前の情報や取引先の名前を、利用条件を確かめずに AI に入力していないか
最後の項目は気になります。発表前の情報を AI に入れても問題ないんでしょうか?
使う AI の利用条件によります。AI 事業者ガイドラインは、AI を使う側に対して、機密情報などを不適切に入力しないよう注意を払うことを求めています。入力した内容がどう扱われるかをサービスの利用条件で確かめ、社内の決まりがあればそれに従ってください。
分かりました。日本語の原稿を翻訳に出す前に、直しておくところはありますか?
主語を補う、1 文を短くする、といった直しがあります。詳しくはプレスリリース翻訳前の日本語原稿の直し方|東南アジア向けに先に直す 6 か所にまとめています。
人が確かめる 3 か所
- 数字は、金額と通貨名、数量、割合、順位。事実メモに無い数字は消す
- 固有名詞は、社名、商品名、人名、役職、地名。英字のつづりを 1 つにそろえる
- 日付は、年が付いているか、どの国の日付か。翻訳の後にもう一度見る
手順は分かりました。そもそも AI を使うのがよいのか、ほかの方法と比べて考えたいです。
初稿を作る手段の比べ方
広報がいない会社が初稿を作るには、どんな方法がありますか?
大きく 3 つです。自分でゼロから書く、AI で初稿を作って人が直す、PR 会社やライターに頼む。どれを選んでも、事実メモを作る作業は自社に残ります。
| 手段 | 向いている場合 | 自社に残る作業 |
|---|---|---|
| 自分でゼロから書く | 発表の中身が単純で、過去のリリースを手本にできる | 構成、文章、事実の確認のすべて |
| AI で初稿を作って人が直す | 書いた経験がなく、まず形にしたい | 事実メモの作成、数字・固有名詞・日付の照合 |
| PR 会社・ライターに頼む | 継続して発信し、取材対応まで任せたい | 事実メモの作成、できた原稿の確認 |
AI を使う場合、どのツールで作ればよいですか?
汎用の AI でも作れますし、配信サービスの中に作成機能が入っているものもあります。たとえば海外PR.jp は、管理画面からリリースを入稿する仕組みで、AI でリリース文を作成する機能もあります。
その機能を使えば、確認はいらなくなりますか?
いいえ、どの AI で作っても、数字・固有名詞・日付を人が確かめる手順は変わりません。何を入力するのか、どの言語で出力されるのかといった細かい仕様は公式サイトに書かれていないので、使う前に確かめてください。
配信の費用はどのくらいですか?
海外PR.jp の場合、配信は 1 か国 1 配信で 50,000 円 (税別)、翻訳オプションは 1 言語 20,000 円 (税別) で、英語、タイ語、ベトナム語、インドネシア語の 4 言語です。1 か国に 1 言語で出すなら、合わせて 70,000 円 (税別) になります。どの国でも 10 媒体以上への掲載が保証されています。時期によってキャンペーン価格の場合があるので、最新の料金は公式サイトで確認してください。
初稿から配信までの道筋が見えてきました。
手段を選ぶのは最後で構いません。先に事実メモを作っておけば、どの手段を選んでも使えます。最後に、今日の内容を場面ごとにまとめます。
場面別のまとめ
社内で共有したいので、一覧にしてもらえますか。
作業の順に並べました。各国の基本情報や AI のガイドラインは更新されるので、作業の前に公式の最新の記載を確認してください。
| 場面 | すること | 確認先 |
|---|---|---|
| 書き始める前 | 事実メモを作る。未定の項目を社内で決める | https://j-net21.smrj.go.jp/qa/org/Q1139.html |
| 構成を決める | 見出し・リード・本文・会社概要・問い合わせ先の順に並べる | 同上 |
| 海外向けに直す | 国名、年、通貨名、対応言語を足す | https://www.jetro.go.jp/world/asia/ |
| AI で初稿を作る | 事実メモだけを材料にし、数字・固有名詞・日付を照合する | https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/ai_network/02ryutsu20_04000019.html |
| 翻訳に回す | 日本語を確定させてから翻訳し、3 か所をもう一度見る | 上の 6 か国の表 |
ありがとうございます。配信した後のことも知っておきたいのですが、関連する記事はありますか?
配信したのに載らないときの点検は海外プレスリリースが掲載されない理由|東南アジアで点検する 3 つの原因で扱っています。原稿づくりの記事はリリースの書き方・翻訳にまとめています。
よくある質問
いくつか細かい質問をさせてください。リリースの長さに決まりはありますか?
公的に決まった長さはありません。5 つの要素がそろっていて、リードだけ読んでも発表の中身が分かる状態を目安にしてください。
代表者のコメントは入れた方がよいですか?
入れても入れなくても構いません。入れる場合は、AI が書いた文をそのまま使わず、本人が言った内容か、本人が確認した文にしてください。
最初から英語で AI に書かせてもよいですか?
書かせること自体はできます。ただ、社内に英語の原稿を確かめられる人がいないなら、日本語で事実を固めてから翻訳する方が、間違いに気づきやすくなります。
発表する中身がまだ決まりきっていない場合は、どうすればよいですか?
事実メモの「未定」の項目を先に社内で決めてください。日付や金額が仮のまま初稿を作ると、確定した後に全体を見直すことになります。
参考にした公開情報
執筆・編集: 海外PR.jp 編集部 (VRI Creatives)。東南アジア・オーストラリア向けの、掲載保証付きプレスリリース配信サービスです。
本記事は各国の公的機関などの公開情報をもとに作成しています。各国のメディア事情・制度・祝祭日は変わることがあるため、 実施の前に最新の情報を確認してください。